第1章*1話


「あー!!早くしないと遅刻しちゃうよ!!」
「琴音!!朝からうっさいよ!!!」
時計の針は8時30分を指している。
いつもなら起きているこの時間。
昨日は遅くまで語り合っていた、この2人。
幼馴染で、いつも一緒だった。
遊馬琴音(あすまことね)と四百苅美桜(しおかりみお)。
大学2年生の二人は施設、胡桃院で育った。
2年前、2人とも奨学金で大学へ進学することができた。
鏡花大学の教育学科に通う琴音の顔立ちはいたって平均的で
見方によれば、キレイでもあるし可愛くもあるなんとも言えない顔立ち。
今までに彼氏とか好きな人とか、全然興味なかった。
一方、鏡花大学の史学科に通う美桜は、
顔立ちがはっきりしていて、大人っぽい。
しかも、頭も結構いい方だ。
彼氏だっている。今までに何人の人と付き合っていたんだろうか。
そんな美桜にひそかに琴音は憧れていた。
2人の共通点は胡桃院で育ったこと。
もう一つ・・・。
2人共、胸に紫色の丸い玉をかけていた。
小さいけれど、とても大切なものだった。
胡桃院の先生からもらったものだけれど、
先生が言うには親の形見なのだそうだ。
琴音と美桜の親はとても仲が良かったらしい。
捨てられた2人に手紙が添えられていた。
雨がひどく、雷が鳴っていた日だった。。
昨日の夜は美桜の新しい彼氏のことでたくさん語った。
鏡花大学近くのアパートに住む2人だったが、今日は遅刻寸前だった。
学科は違うが、一緒に通うようにしているのだ。

その日は急いで学校へ向かったのだった。


つづく